- かく
- I
かく(動カ五[四])〔「掻く」と同源〕(1)体内にある汚いもの, 好ましくないものを外に出す。
「走ったものだから汗を~・いた」「いびきを~・く」「恥を~・く」
(2)好ましくないことをする。II「ほえづら~・くな」「べそを~・く」
かく【下矩】外惑星が太陽の西側九〇度に来ることで, 日の出頃に南中する。 西矩。 西方矩。⇔ 上矩→ 矩IIIかく【佳句】よい詩句。 すぐれた俳句。IVかく【各】漢語の名詞に付いて, それらの多くのものの一つ一つの意を表す。V「~大学」「~部門」
かく【客】(1)きゃく。 まろうど。⇔ 主「主~転倒する」(2)いそうろう。 食客。 客分。VI「三千の~わづかに去れり/枕草子 136」
かく【掛く・懸く・繋く】※一※ (動カ四)(1)かける。 つなぐ。「馬にこそふもだし~・くもの/万葉 3886」
(2)構える。 組む。 編む。「八重の組垣~・かめども/日本書紀(武烈)」
(3)結ぶ。 締める。「黒き色には赤き物をたふさきに~・き/宇治拾遺 1」
(4)賭けをする。「押し出して~・きたりければ, はやくかきおほせて/著聞 12」
※二※ (動カ下二)⇒ かけるVIIかく【掻く】(1)指先や細い物の先端を物の表面にあてがって強くこする。 ひっかく。「かゆい所を~・く」「犬が前足で地面を~・く」「へらで壁を~・いて古いペンキを落とす」
(2)かたい物の表面に刃物を当てがって, 削って細かくする。「かつおぶしを~・く」「氷を~・く」
(3)手や道具の先を往復させるようにして, 一面にある物を押しのけたり, 寄せ集めたりする。「道路の雪を~・く」「オールで水を~・く」
(4)細い物の先などで, 器に入れた物を混ぜる。「からしを~・く」
(5)犂(スキ)などで田畑をすき返す。「田を~・く」
(6)刀を手前に引いて切る。「敵の大将の寝首を~・く」
(7)琴を弾じる。 かきならす。「しが余り琴に作り~・きひくや/古事記(下)」
(8)指先を物に立ててつかむ。「倉梯山(クラハシヤマ)を嶮(サガ)しみと岩~・きかねて我が手取らすも/古事記(下)」
(9)報酬や賭けに勝った金を得る。「高駄賃~・くからは大事の家職/浄瑠璃・冥途の飛脚(上)」
(10)髪をくしけずる。「朝寝髪~・きも梳(ケズ)らず/万葉 4101」
(11)手を振り回す。 また, 鳥が羽ばたく。「ただ手を~・きおもてをふり/蜻蛉(中)」
‖可能‖ かける︱慣用︱ 裏を~・寝首を~・欲を~VIIIかく【斯く】(1)このように。 このとおり。 こう。「~言う私は」「~のごとき惨状」
(2)(「かくも」の形で)これほど。 これほどまで。→ かくも(3)副詞「と」と呼応して用いられる。 このように。「とにも~にも」「とやあらん~やあらん」
(4)副詞「か」と呼応して用いられる。 このように。「かに~に」「かにも~にも」
→ かくして→ かくて~なる上はこのようになってしまった以上は。~やあらんこのようであろう。IXかく【書く・描く・画く】〔「掻く」と同源〕(1)文字・記号・絵画・図形を物の表面に記す。 (ア)文字・記号を記す。 《書》「鉛筆で字を~・く」「日記を~・く」(イ)絵画・図形を表す。 《描・画》「画用紙に絵を~・く」「トンビが輪を~・いて飛ぶ」「菅の根を衣に~・き付け着せむ児もがも/万葉 1344」(2)ある思想内容を文章にする。 《書》「恩師に手紙を~・く」「小説を~・く」‖可能‖ かけるXかく【核】(1)〔物〕 原子核のこと。(2)〔物〕 気体の凝縮や液体の沸騰, また液体中から結晶が生成する時などに, その液滴・気泡・微結晶を作り出す最初のきっかけとなるもの。(3)〔化〕 錯化合物において, その中心となる原子。 核原子。(4)〔化〕 有機環式化合物の環形結合をつくっている部分。 ベンゼン核など。(5)〔生〕 真核生物の細胞内にあって, 核膜に包まれ, 遺伝物質を内蔵する球状構造のもの。 主に DNA とタンパク質との複合体から成る。 一から数個の核小体をもち, 細胞の再生と生存に不可欠。 細胞核。(6)核兵器のこと。「~廃絶」
(7)地球の中心核。 地球内部の約2900キロメートル以深の部分。 鉄・ニッケルなどから成り, 液状の外核と固体状の内核とに分けて考えられている。 地核。 コア。(8)植物の種子を保護する堅い部分。 内果皮が硬化したもの。(9)真珠の養殖で, 母貝の体内に入れる小球。(10)ものごとの中心となるもの。 核心。XI「組織の~を作る」
かく【格】(1)そのものの値打ちによってできた段階・位・身分・等級など。「~が違う」「~が上がる」
(2)きまり。 法則。 規則。 方式。「凡(オヨソ)世間出世の~をこえて~にあたるにあたらずと云事なし/沙石 10」
(3)やりかた。 手段。 流儀。「江戸の~にて盃をさしたるおやまを/滑稽本・膝栗毛 5」
(4)〔case〕文法で, 名詞・代名詞などが, 文中で他の語に対してもつ関係。 日本語では, 「が・の・に・を」などの格助詞が格の関係を示す。 また印欧語では, 語形変化や前置詞によってそのような関係を示す。 例えばラテン語には, 主格・呼格・属格・与格・対格・奪格の六つの格がある。(5)〔論〕〔figure〕三段論法で, 大小両前提に含まれる中概念の位置によって分類される四種の形式。(6)律令制下で, 律令の規定を改めるために出された臨時の法令。 きゃく。XIIかく【槨】棺を収める外箱。 また, 古墳で, 死体を収める空間の囲い。XIII「粘土~」
かく【欠く・闕く】※一※ (動カ五[四])(1)(完全なものの)一部分をこわす。 また, そうして不完全なものにする。「皿のふちを~・く」「顔なども~・きて血打ちて出来たり/今昔26」
(2)そろっているものの一部分を備えていない。「首巻を~・く写本」
(3)割ったりして, 大きなものの端を取り去る。「氷を~・いて口に入れる」
(4)必要なものを備えていない。 足りない状態である。「穏当を~・く発言」「決め手を~・く」「義理を~・く」「塩は生命の維持に~・くことができない」「必要~・くべからざる条件」
(5)むだにする。「遊びにひまを~・く」
〔「かける(欠)」に対する他動詞〕‖可能‖ かける※二※ (動カ下二)⇒ かける欠くべからざる是非ともなくてはならない。→ 欠く(4)XIVかく【殻】「電子殻(デンシカク)」に同じ。XVかく【画・劃】※一※ (名)(1)漢字を構成している線や点。 線のみをいうこともある。(2)易の卦(ケ)を表す横段。 —(陽)と--(陰)がある。※二※ (接尾)助数詞。 漢字を構成している線・点を数えるのに用いる。XVIかく【確】たしかであるさま。 はっきりしているさま。XVII「~たる証拠がない」「~とした方針がたたない」「~たる信念をもつ」
かく【膈】(1)腹部と胸部の間。(2)吐き気を伴う胃の病い。XVIII「定業と見えてやりては~で死に/柳多留拾遺 3」
かく【舁く】(二人以上で)肩にのせて運ぶ。「駕籠(カゴ)を~・く」「夫人をば輿に載せて~・かせ/即興詩人(鴎外)」
‖可能‖ かけるXIXかく【覚】〔仏〕(1)悟り。 仏の智慧。 菩提(ボダイ)。(2)ブッダ。 仏。 悟った者。XXかく【角】※一※ (名・形動)(1)四角。 方形。 また, 四角なさま。「~に切る」「紫檀の~な名刺入/門(漱石)」
(2)〔数〕〔angle〕一点から出る二本の半直線で作られる図形。 また, その開き方の度合。 角度。(3)将棋の駒の一。 角行(カクギヨウ)。「飛車~なしで勝つ」
(4)つので作った笛。 中国から伝わり, 古く軍陣で用いた。 つのぶえ。(5)中国・日本の音楽理論でいう五音(ゴイン)のうち, 低い方から数えて三番目の音。→ 五音(6)二十八宿の一。 東方の星宿。 角宿。 すぼし。(7)紋の輪郭として使われる正方形。 平角・隅入角など。(8)「鉸具(カコ)」に同じ。※二※ (接尾)助数詞。(1)一分金, または一分銀を数えるのに用いる。「今時のこんがうに弐~づつとらしても/浮世草子・男色大鑑 5」
(2)中国の貨幣単位の一。 一元は一〇角。 一角は一〇分。XXIかく【賭く】⇒ かけるXXIIかく【郭】(1)城, とりで, 都などのかこい。 くるわ。(2)遊里。 花街。 いろまち。 くるわ。XXIIIかく【鉸具】「かこ(鉸具)」に同じ。~を入・れる馬を速く走らせるために, 鐙(アブミ)で馬の腹を蹴る。 かくを当てる。XXIVかく【駆く・駈く】⇒ かける
Japanese explanatory dictionaries. 2013.